2008年12月30日
餅つきの音
昔からの言い伝え、「駕籠に乗る人かつぐ人、そのまたワラジを作る人・・・・・・」ご存じの方も多いだろう箴言である。得てして大名行列で注目するのは駕籠に乗る人なんだが、本当に凝視しなければならないのはワラジを作る人ではなかろうか。いつの世も何処の世界でもスポットライトを浴びることなく黙々と任務を遂行する人々がある。彼らは当然のことして任を果たしておられるのだろうが、その恩恵は計り知れない。定刻少し前に持尾城趾に上がってみると、案の定、準備作業に汗を流す数人のメンバーが・・・・・・。UさんOkさんNsさんの方々である。聞くところによれば昨日も餅米の準備や洗い作業に奮闘しておられたようだ。仲間達が喜んでくれれば、そうした思いが己を捨てた行動へと駆り立てるのであろうか。刮目して感謝すべき軍団である。
ペンより重い物を持ったことがないので・・・・・。腰に響きますね。
80年ほど使い込まれた臼です。旧家の蔵にはお宝が眠ってますね。
ちびっ子達も集まって賑やかに餅つきが始まった。里山倶楽部の恒例行事でもある。無論、こうしたイベントの言い出しっぺはUさんだ。率先垂範して作業に当たっておられる。概ね一人5キロの予約、全部を消化するには結構な時間がかかりそうだ。杵と臼を使った伝統的手法の餅つきである。子ども達が喜んでくれるのが何よりのご褒美だろうか。
まずは餅米を洗うことから。実は
昨日にUさん達が前もって準備し
て下さってたのだ。
ザル一杯が蒸し器の一杯分、重
さでは2.5キロ程度。1.5キロが
概ね一升ですので容積は換算し
てみて下さい。
蒸し器に移し替えました。
一人で5キロ予約が大半ですの
で、2回蒸して一人分の下準備
というとこでしょうか。
みごとなへっついさんでしょう。
無論、自作のかまどです。
4個の蒸し器を一度に蒸すこと
ができます。燃料も又自家製の
薪ですね。
昼食はもちろんつきたてのお餅ですね。例によってKさんが豚汁の準備を。料理名人との評判の高い方で、その腕前はプロ並みか。大鍋でぐつぐつ煮込んだ豚汁には、思わず顔がほころびますね。子ども達もうれしそうです。立ち食いながら何度もお変わりしています。
猪鍋に勝るとも劣らぬ美味です。山で食べる豚汁は又格別、食も進みます。
そうこうしてる間にも餅が仕上がっていきます。これはお鏡かな。
おっととっと、本日は首謀者のUさんの誕生日でもありました。否、彼の誕生日祝いに餅つきを?・・・・・・・・・。それが真実かもしれませんが、まっ良しとしましょう。里山倶楽部のお嬢さん方が準備してくれたケーキがなんともかわいげです。ローソクを吹く彼のうれしそうな表情をどアップで。
餅つきも佳境にはいって終了したのが午後の4時頃、もう日も陰って少々肌寒くなってきます。ありがたいのはやはり火の気、焚き火の炎がなんとも人の心と体を暖めてくれます。いつまでも見つめていたい炎のぬくもりです。
薪を使った焚き火ほど、ありがたいものはないですね。
できあがった餅を土産に自宅へ直行、車のトランクを開けて呆然、持尾城趾にカメラを入れたリュックとジャンバーを置き忘れた。なんともとんまな次第である。やむを得ないのでバックしてみると、SzさんとNsさんがまだ滞在しておられた。Szさんは仕事中、Nsさんは梅の小枝をカットしておられた。昼間に隣地の梅の木で剪定中だったのだが、剪定枝を残しておられたようだ。 「おばあちゃんが梅の花が好きなので、持ち帰って花を咲かせ、見せてあげようと思ってます」 との言葉が、なんとも心暖かく風雅に響いてくる。雅とはまさに彼女のような心情を指す言葉ではなかろうか。
東風(こち)吹かば 匂ひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ
太宰府へと左遷された道真公が京を去るにあたって詠まれた和歌だが、梅の花に寄せる想いが切々と伝わってきます。梅花の放つ高貴なたたずまいと香りとが人の心を捕らえて離さぬようですね。時代が変わり人が変わっても梅花に寄せる想いは変わらぬようです。おばあちゃんのうれしそうな笑顔が想像できますね。