2008年02月20日
力つき果てて
彼の名はハーベスター、簡単に言うと、自走式の脱穀機である。稲刈りでは重要なパートナーで、刈り取った稲束から籾を分離する役割を担っている。最近はコンバインの普及で影が薄くなったが、中山間地域では今なお現役選手である。写真の彼は相当な年代物で、近くの農家から無償で譲っていただいたものだ。ここ数年元気で頑張ってくれていたが、とうとう動かなくなった。
「形あるものは必ず壊れ、命あるものは必ず滅ぶ」といわれる、大乗仏教の教えのとおりである。なかなか律儀な男で、10月の稲刈りでは、最後の最後の稲束まで働き、最終の1本が終わった時点で息を止めた。それ以降何度スターターを引いても動いてくれない。雨に濡れない場所へと願うのだが、動けないので田圃のなかで一人さびしくたたずんでいる。
ホームレスのようにブルーシートをかぶり、何やらぽつねんと寂しそうだ。雨にあたらぬように小屋の中へ運んであげたいのだが・・・・・・・・・・・・
寄り添う菜の花がなんともいじらしい。
米作りには多数の機械が必要だ。テレビドラマのようにすべてを手作業でやるのは事実上不可能で、大なり小なり機械のお世話になっている。とんびの米作りは予算がないこともあり、最少限度の機械利用だ。それも借用したり、彼のように古い物を譲っていただいたり、代用品を活用したり・・・・・四苦八苦の工夫を楽しみながらやっている。この年になって、手仕事の楽しさ・おもしろさを再発見した次第である。集まる仲間達も同様とみえ、どことなく顔がほころんで生き生きとしている。組織社会では満たされなかったものがあるのだろう。好みの問題はあるが、これからリタイアされる方々には特に、是非、農のある暮らしをとお薦めしたい。